北欧建築の巨匠アルヴァ・アアルトが手掛けたセイナッツァロ村役場は、宿泊も可能な特別な文化財です。
本記事では、その建築美や滞在体験の魅力、そしてヘルシンキからの行き方まで詳しく解説します。
セイナッツァロ村役場とは

セイナッツァロ村役場(Seinätsalo Town Hall)は、フィンランドの巨匠アルヴァ・アアルトが設計した公共建築です。
ヘルシンキから北に270kmの所にあるユヴァスキュラ郊外の小さな町に建つこの建物は、レンガと木材を組み合わせた温かみのある外観と、中庭を囲むコの字型の構造が特徴で、アアルト建築の傑作のひとつと称されています。
アアルトはこの建物で、「人間と自然の調和」「民主主義の象徴的な空間」を表現しようと試みました。設計コンセプトには、市民が主体となる町づくりという思想が込められており、行政施設でありながら「住む・集まる・学ぶ」といった生活の要素が丁寧に織り込まれています。
セイナッツァロ村役場の見どころ
それでは早速セイナッツァロ村役場の見どころを紹介します。
外観

まずは、セイナッツァロ村役場の外観です。
この村役場を訪れるとき、森の中にひっそりと建つ外観に心を奪われます。
またロの字型に組まれたこの建物は、見る角度によって大きく印象を変えるのも印象的。
近くで見ると外観のレンガは焼きムラがあり、均質ではない素材感が周囲の森と調和させるのかもしれません。
中庭

続いては緩やかな階段で一層高い場所にあるする中庭です。
セイナッツァロ村役場の建物は基本2階建て(一部3階建て)ですが、中庭は一層分を土で埋めて地面を高くしています。
そのため、中庭に建った時の建物の圧迫感がありません。
村役場のエントランスも階段を上った2階にあり、まずこの中庭に対する空間体験をすることになります。
セイナッツァロ村役場の魅力は、図面では伝わりにくいこの「空間体験」にあると言えます。
エントランス

また、住宅を思わせるエントランスにも驚かされます。
木やレンガなどの自然素材を使い目に優しく、天井高を抑えているためどこか住宅のようなスケール感です。
市役所や県庁舎ではなく、村役場といった規模ゆえにこのスケール感が可能だっと思います。
回廊

セイナッツァロ村役場の回廊は、中庭を囲むように配置された建物の動線として機能しながらも、アアルト建築らしい人間味あふれる空間体験を提供します。
赤レンガと木材が織りなす質感豊かな壁面と床に柔らかく差し込む自然光。
またクランクやところどころに配置された植物によって視線の変化をもたらし、単なる通路ではなく質の高い空間を歩いて感じることができます。
議会場

セイナッツァロ村役場の一番の見どころは、この議会場かもしれません。
壁はレンガ、床と扉、家具は木と限定された素材を使用。
そして教室くらいの大きさに二層分の高い天井。そしてハイサイドライトと傍聴席からほのかに漏れる光によって、どこか教会を思われる空気感。
1952年竣工というご時世柄、民主主義で物事を決める場の神聖さのようなものを感じます。
図書館

曜日の関係で私は訪問できませんでしたが、図書館もあるようです。
木が作り出す柔らかい雰囲気と、自然光がたっぷり入る空間。
棚や家具も木で制作され住宅のような心地よさが感じられるこの図書館は、家の近くにあったら最高だろうなと思わせるほどだそうです。
セイナッツァロ村役場の図書館の魅力についてはこちらの記事が良くまとまっていました。
セイナッツァロ村役場への行き方

セイナッツァロ村役場はユヴァスキュラ市内からバスで約30分の距離にあります。
そのため、セイナッツァロ村役場の観光の拠点はユバスキュラになります。
ヘルシンキ→ユヴァスキュラへ

ヘルシンキからユバスキュラまで行く方法は大きく分けて2つで、VR(フィンランド国鉄)か、オムニバスなどの長距離バス。
VRは座席指定制で、日本の新幹線のように快適で時間も正確。また早期予約で割引料金もあります。
長距離バスの方は、時間は多少前後しますが、VRよりも安く乗ることができます。
行きはVR、帰りは長距離バスという方法もありですね。
またVRのチケット予約については、こちらの方の記事を参考にしました。
所要時間:約3時間〜4時間
乗車場所:ヘルシンキ中央駅(VR)、カンピ・ショッピングセンター地下(オムニバス)
降車場所:ユバスキュラ駅(VR)、ユバスキュラトラベルセンター(オムニバス)
ユヴァスキュラ市内 → セイナッツァロへ

ユヴァスキュラ市内からセイナッツァロはバスの#16または#21番に乗車して「Seinätsalo-talo」バス停下車すぐです。
バスに乗車し、運転手に「セイナッツァロ(もしくはサユナットサロ)」と伝え、クレジットカードで決済しました。
所要時間:約30〜40分
乗車場所:ユヴァスキュラ市中心部の「keskusta5(バスターミナル)」
降車場所:「Ss-Kunnantalo 1」もしくは「Ss-Kunnantalo 2」下車、徒歩すぐ
※運行本数は限られるため、事前に時刻表の確認がおすすめ(Googleマップでも検索可)
困ったらGoogleマップ
困ったらGoogleマップを活用しましょう。特にユヴァスキュラ市内からセイナッツァロに行くバスの番号は時間によって刻々と変わっていきます。
困ったらGoogleマップで「Seinätsalo Town Hall」と検索し、ルート検索しましょう。
見学方法

私は宿泊したので入館料はいりませんでしたが、見学だけの方は入館料として10ユーロ必要なようです。
- 開館時間:サマーシーズン(6〜8月)12:00〜16:00・オフシーズン(9〜5月)12:00〜15:00
- 入館料:10ユーロ
村役場に”宿泊”も可能

この村役場には宿泊することも可能です。
特に、観光の拠点となるユバスキュラには、アアルト博物館や、ユヴァスキュラ大学キャンパスなどもあるため、村役場に宿泊し、翌日これらのアアルト建築も観光する流れもありですね。
宿泊した部屋


私が宿泊したのは「ELISSA」ルーム。広さは10㎡ほどの中庭が見える部屋です。
部屋の中には冷蔵庫とレンジ・電気ポットが設置されていて、滞在に不自由はありませんでした。


一人で宿泊するにはシャワーとトイレが共用の、この「ELISSA」ルームかALVARIルームで十分ですが、他にもキッチンと水回りが内包されたアパートメントタイプの部屋もあるようです。
セイナッツァロ村役場の見学自体は宿泊しなくても可能ですが、宿泊者は一般の見学時間が終わった後も見学が可能。
アアルトの傑作といわれる建築物を独り占めできる経験はなかなかないので、建築関係者は宿泊を検討しても良いと思います。
宿泊時の注意点
私が訪れた6月~8月は、チェックイン時間が15時~16時で、それ以降はキーボックスで受け取る形になるようです。
チェックインの際に説明を受けましたが、ドアの開け閉めや16時以降の外出時の出入りなどいろいろややこしいので、対面でのチェックインの方がよさそうです。
またチェックアウトは部屋の中にカギを置いて出ていくだけでした。
周辺スポット
セイナッツァロ村役場の近くにはいくつかお店があったので紹介します。
宿泊する際の晩御飯や朝食の選択肢に重宝しました。
スーパーマーケット

徒歩数分の所にスーパーマーケットがありました。
規模はそれなりに大きく、生鮮食品や飲み物(ビール・他)、総菜など一式そろっていました。

晩御飯になりそうな出来合いのもありましたし、私は翌日の朝食のパンをここで買いました。
PIZZERIA AALTO(ピザ屋)

アアルトの名前を冠にしたピザ屋もありました。
ピザはもちろんバーガーもありここで晩御飯を食べるのもありだと思います。
セイナッツァロの描写がある建築家の本
アアルト建築の傑作といわれるセイナッツァロ村役場は、著名な建築家も訪問し、著書に記しているようです。
「建築を気持ちで考える」 堀部安嗣

居心地の良さを第一に、素材とディテールへこだわり、気候風土に根差した建築をつくる堀部安嗣の本です。
本の構成は「1章 – 私が影響を受けた建築」と「2章 – 私の試行錯誤の軌跡」の二部構成になっているのですが、セイナッツァロ村役場は、1章の私が影響を受けた建築として、他のアアルト建築と一緒に紹介されています。
本の中では、セイナッツァロ村役場をアアルト建築で一番好きな建物として紹介しており、複数枚の写真と手書きの平面図・断面図とともに紹介しています。
まとめ
この記事では、セイナッツァロ村役場の魅力について紹介しました。
セイナッツァロ村役場は、見学だけでなく実際に宿泊できる特別場所です。
アアルト建築の傑作と言える建築を独り占めできる経験は建築関係者には特別な体験になると思います。
時間に余裕のある方はぜひ宿泊を検討してみて下さい。
また、ヘルシンキの観光についてはこちらの記事をご覧ください↓
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